顧客管理ソフトは、顧客の情報と接触の記録を管理するためのソフトウェアです。「ソフト」という言葉の中に、自分のパソコンに入れて使うインストール型と、ブラウザで使うクラウド型の2つが混ざっています。
この2つは費用の出方も、複数人での使い方も、データの置き場所も違います。製品を比べる前に、どちらの形態を選ぶかを決めてください。 形態が決まると候補は大きく絞れます。
以下では、形態の違い、タイプ別の向き不向き、無料で使える範囲とその限界を順に扱います。
顧客管理ソフトとは何ですか?
顧客管理ソフトは、顧客の属性情報と、その顧客に対して行った連絡や商談の記録を、まとめて扱うためのソフトウェアです。「顧客管理システム」「CRM」とほぼ同じものを指します。
呼び方には傾向があります。厳密な定義ではなく、使われ方の違いです。
呼び方 | よく指すもの |
|---|---|
顧客管理ソフト | インストール型を含む、ソフトウェア製品全般 |
顧客管理システム | 組織で運用する前提の仕組み。クラウド型が中心 |
顧客管理アプリ | スマートフォンで使うもの、または小規模向け |
CRM | 顧客との関係管理を主眼にした製品カテゴリ |
呼び方で機能が決まるわけではありません。 同じ製品が文脈によって「ソフト」とも「システム」とも呼ばれます。検索するときは複数の語で調べたほうが候補が漏れません。
扱う対象は、どの呼び方でも3つに分かれます。顧客(会社・担当者)、活動(連絡・訪問・提案)、案件(進行中の商談)です。顧客は1件で変わらず、活動と案件は増え続けます。
この3つのどこまでを扱うかが、製品ごとの実質的な差です。 顧客の名簿だけを持つものから、案件の進捗まで管理するものまで幅があります。名簿だけで足りるのか、進捗も要るのかを先に決めてください。
選定の軸そのものは顧客管理システムとはで扱っています。本記事は、その前段にある「どの形態にするか」を扱います。
インストール型とクラウド型の違い
自分の端末やサーバーに入れて使うのがインストール型、ブラウザでアクセスするのがクラウド型です。違いは6つの観点に出ます。
観点 | インストール型 | クラウド型 |
|---|---|---|
費用の出方 | 買い切りが中心。1回払い | 月額または年額。使い続ける限り発生 |
複数人での利用 | 端末ごとに導入。共有は別途仕組みが必要 | 標準で複数人が同時に使える |
データの置き場所 | 自社の端末・サーバー | 提供事業者のサーバー |
外出先からの利用 | 原則できない | ブラウザがあれば使える |
更新 | 自分で入れ替える。有償の場合がある | 自動で更新される |
障害時 | 自社で復旧する | 提供事業者が復旧する。復旧を待つ |
「安いのはどちらか」は期間で変わります。 買い切りは初回の負担が大きく、その後の費用が抑えられます。月額は始めやすく、使い続けると総額が増えます。3年から5年で見比べてください。
この6つのうち、後から変えにくいのは「複数人での利用」と「データの置き場所」です。費用や更新の方式は契約を変えれば動きますが、この2つは製品そのものを替えることになります。先に決めるのはこの2つです。
インストール型が向く場合
データを社外に出せない規約がある、インターネットに接続しない環境で使う、担当者が1人で完結している、という条件のいずれかがあるときに向きます。
注意が要るのは引き継ぎです。1台の端末にデータがある状態は、その端末が故障した時点でデータが失われます。バックアップの取り方と保管場所を、導入と同時に決めてください。
もう1つは、担当者が増えたときの分岐です。2台目の端末に入れて別々に使い始めると、同じ顧客の情報が2か所にでき、どちらが最新か分からなくなります。共有フォルダに置いても、同時に開いた場合の挙動は製品によって違います。
インストール型を選ぶときは、「1人で使う」を前提として明示しておくこと。 将来2人以上になる見込みがあるなら、その時点で移行が発生することを織り込んでおきます。
クラウド型が向く場合
複数人で同じ情報を見る、外出先から使う、他のツールと連携する、という条件があるときに向きます。BtoBの営業で複数人が関わる場合は、ほぼこちらになります。
確認しておくのはデータの取り出し方です。契約を終える判断をしたときに、自社のデータをCSVやAPIで持ち出せるかを、導入前に見ておきます。
取り出せる範囲も見ます。顧客と案件は出せても、活動履歴や添付ファイルが出せない製品があります。乗り換えのときに失うのは、たいていこの部分です。
もう1つ確認するのは、データが保管される場所と、事業者側のバックアップ体制です。社内規程で国内保管が求められる場合は、契約前の確認事項になります。
費用の見え方が逆になる点
インストール型は「初回が高く、その後が安い」、クラウド型は「始めやすく、続けると増える」形になります。これは費用の総額の話ではなく、どのタイミングで判断が必要になるかの違いです。
インストール型は導入時に大きな判断が要り、その後は更新のたびに小さな判断があります。クラウド型は導入の判断が軽く、代わりに「使い続けるか」を毎年判断することになります。
社内の稟議の通しやすさもここで変わります。1回の支出として通すのか、毎月の固定費として通すのかで、必要な説明が違います。金額が同じでも、通る難しさは同じではありません。
顧客管理におすすめのソフトは?
製品名の序列は条件で入れ替わるため、ここでは並べません。代わりに、自社の条件からタイプを絞る形で整理します。
自社の状況 | 向いているタイプ |
|---|---|
使うのは1人。データを外に出したくない | インストール型 |
2〜5人。まず試したい | クラウド型のフリープラン |
複数人で商談を進める。期日管理が必要 | クラウド型の有料プラン |
業務が業界固有。項目が最初から欲しい | 業種特化型 |
項目もビューも自分で設計したい | 汎用データベース型 |
人数と、期日管理が必要かどうかで大きく分かれます。 1人で顧客情報を持つだけならインストール型で足り、複数人で商談を進めるならクラウド型の有料プランが要ります。
判断が分かれやすいのは「2〜5人でこれから増える」場合です。ここでフリープランから始めると、人数が増えた時点で有料に移ることになります。移るのが同じ製品の中なら手間は小さく、別製品ならデータ移行が発生します。
増える見込みがあるなら、有料プランを持つ製品のフリープランで始めてください。 無料のインストール型で始めると、増えたときに製品ごと替えることになります。
もう1つの分岐は、他部門が見るかどうかです。営業だけで完結するなら製品の選択肢は広く、マーケティングやカスタマーサクセスも同じデータを見るなら、権限を分けられることが条件に入ります。
タイプが決まったら、製品の一覧は比較サイトで得られます。一覧を先に見ないことです。 タイプを決めずに見ると、掲載順や掲載数が判断に影響します。
無料の顧客管理ソフトはどこまで使えるか
「無料」には3つの形態があり、限界の出方が違います。混同すると、後から想定外の制約に当たります。
1. 無料のソフト本体(インストール型)
ライセンス費用がかからないソフトです。個人や小規模での利用を想定したものが多くあります。
限界は共有です。1台にデータがある形が基本で、複数人が同時に更新する用途には向きません。サポートも限られるため、不具合や操作の疑問を自力で解決する前提になります。
更新の扱いも確認します。無料で使えるのが現行版だけで、次のバージョンは有償という形もあります。長く使う前提なら、更新の方針が公開されているかを見てください。
無料のインストール型が合うのは、1人で使い、データを外に出さず、機能が今のままで足りる場合です。 この3つが揃っていれば、費用をかけない選択は合理的です。
2. SaaSのフリープラン
クラウド型の製品が用意している無料の枠です。有料プランと同じ画面を使えることが利点です。
限界は制限の置き方に出ます。ユーザー数、登録できる件数、権限設定、外部連携、自動化のいずれかが制限されているのが一般的です。制限のうち「権限設定」が無いプランは、複数人で使い始めた段階で行き詰まります。
比較するときは、制限の内容を機能名ではなく業務で確認してください。「自動化なし」と書かれていても、期日の通知が含まれるのかどうかで実務の影響が変わります。通知が無ければ、期日の管理は人が担うことになります。
件数制限も同じです。上限に達したときに何が起きるかを確認します。登録できなくなるのか、古いものから消えるのかで、対処の緊急度が変わります。
3. 汎用ツールの無料枠
表計算ソフトやメモアプリを顧客管理に使う形です。Microsoftは「Microsoft 365 for the web (旧称 Office) を使用して、Word、Excel、PowerPoint に無料でアクセスできます。」と記載しています(2026-08-12取得)。
出典: https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/free-office-online-for-the-web
限界は構造です。顧客と活動を1つの表に持つことになり、同じ顧客が複数行に分かれるか、列が横に伸び続けます。判定条件は顧客管理をExcelでやる方法と、乗り換えを判断する条件にまとめています。
この形が向くのは、件数が少なく、触るのが1人か2人で、期日を人が管理できている間です。「無料だから」ではなく「今の規模なら足りるから」で選んでいる状態を保ってください。 規模が変わったときに判断を見直せます。
無料で始めるときに決めておくこと
形態を問わず、次の3つを先に決めておくと後戻りが減ります。
データの持ち主。 個人アカウントで持つと、退職時に引き継ぎが発生する
バックアップ。 どこに、どの頻度で取るか
移行の出口。 有料や別製品へ移るとき、データを取り出せるか
3つ目が抜けたまま1年使うと、蓄積したデータが移せないことに後から気づきます。無料の段階でも、書き出しができるかを一度試しておいてください。
試すのは登録から1週間以内が適当です。データが少ないうちなら、移せないと分かった時点で別の製品に替えられます。1年分が溜まってから気づくと、手で写すか諦めるかの選択になります。
有料に切り替える判断
件数では決まりません。次の事象が起きているかで判定します。
同じ顧客に2人が別々に連絡した
どのファイルが最新か分からなくなった
期日を過ぎた案件に誰も気づかなかった
見せたくない情報があるのに範囲を分けられない
担当者以外が状況を答えられない
1つでも起きているなら、無料の範囲を超えています。 詳しい判定条件は顧客管理をExcelでやる方法と、乗り換えを判断する条件の6条件を使ってください。
切り替えるときは、全部を一度に移しません。現在も接触している顧客と、進行中の案件だけを先に移し、動くことを確認してから残りを足します。
移す列も絞ります。顧客ID、会社名、担当者、ステータス、次回アクション日の5つで始められます。過去の全項目を対応させようとすると、対応表の作成で移行が止まります。
1〜2週間は両方に入力して、運用が回ることを確認してから切り替えてください。ツールを替えただけでは運用は変わりません。 誰がいつ更新するかを決め直す時間が必要になります。
費用の考え方
買い切りと月額は、比べる期間を揃えないと判断できません。次の形で並べてください。
初回にかかる額。 ライセンス費用、初期設定、データ移行
毎月かかる額。 利用料×人数、保守費用
3年間の合計。 上の2つを合算する
移行にかかる工数。 社内の作業時間も費用として数える
4を入れる理由は、安い製品に移した結果、社内の作業が増えて総額が上がることがあるためです。移行と定着にかかる時間を、金額に換算して並べてください。
数え方の目安は、移行の作業時間と、最初の1か月で発生する問い合わせ対応の時間です。この2つは導入する側の工数として必ず発生します。日本語のサポートやオンボーディングが付いているかで、ここが変わります。
利用料が安く見えても、社内で吸収する工数が大きければ総額は上がります。 逆に、設定や定着を支援してもらえるなら、利用料の差は回収できることがあります。比べるのは利用料ではなく、動く状態にするまでの合計です。
Pipedriveの料金
プラン | 月額(税抜) |
|---|---|
Lite | ¥2,800/月 |
Growth | ¥6,800/月 |
Premium | ¥9,800/月 |
Ultimate | ¥13,800/月 |
出典: https://www.pipedrive.merinc.co.jp/plans(2026-08-12取得)。年間契約で月額から最大36.4%の割引。全プランに日本語サポートと日本語オンボーディングが付きます。
Merは国内唯一のマスターパートナーとして日本市場でPipedriveを提供しています。初期環境構築(Pipedriveスターターサポート)とAI Operations支援サービスは個別見積もりです。
無料トライアルがあります。今使っているソフトや表計算ソフトから数十件だけ取り込み、複数人での同時利用と期日の通知を確かめるところから始められます。
よくある質問
顧客管理ソフトと顧客管理システムは違うものですか?
ほぼ同じものを指します。「ソフト」はインストール型を含むソフトウェア製品全般、「システム」は組織で運用する仕組みを指す傾向がありますが、厳密な区別はありません。
選定の軸は顧客管理システムとはで扱っています。
スマートフォンだけで顧客管理できますか?
できますが、条件があります。閲覧と簡単な記録はスマートフォンで足りますが、項目の設計や一括での取り込みはパソコンの画面が必要になる製品が多くあります。
外出先での入力を重視する場合は、トライアルでスマートフォンから1件登録してみてください。そのときの所要時間が、実際に使われるかどうかを決めます。移動中に30秒で記録できるなら習慣になり、3分かかるなら後回しにされます。
買い切りのソフトを選ぶと、あとで困りませんか?
困る場面は3つに絞られます。複数人で同時に使いたくなったとき、外出先から見たくなったとき、他のツールと連携したくなったときです。
いずれも将来の話であれば、買い切りで始めて問題ありません。ただしデータを書き出せるかは、導入時に確認してください。
無料プランから有料へ移るとデータは残りますか?
同じ製品内のプラン変更であれば、通常はそのまま残ります。別製品へ移る場合はCSVでの書き出しと取り込みが必要で、項目の対応関係を作る作業が発生します。
移す前に、書き出したCSVに活動履歴と添付ファイルが含まれるかを確認してください。含まれない製品があります。
社内にIT担当がいなくても導入できますか?
クラウド型であれば、初期設定は管理画面から進められます。詰まりやすいのは設定ではなく、項目と運用ルールを決める部分です。
誰が何をいつ入力するかを先に決めておくと、設定は短時間で終わります。日本語のサポートやオンボーディングが付いているかも、選定時に確認してください。
顧客管理ソフトとメールソフトの連携は必要ですか?
複数人で顧客に連絡する場合は必要になります。連携がないと、誰がいつ何を送ったかが個人のメールボックスに残り、他の人から見えません。
連携の粒度は製品によって違います。送信履歴が残るだけのものと、顧客ごとにスレッドが紐づくものがあります。表記だけでなく、実際の画面で確認してください。
途中で製品を替えると、過去のデータはどうなりますか?
CSVで書き出せる範囲は移せます。移せないことが多いのは、活動履歴、添付ファイル、変更履歴です。
替える判断をした時点で、旧製品を参照専用として残す期間を決めてください。全部を移そうとせず、必要になったときに旧製品で調べる形にすると、移行が止まりません。
インストール型からクラウド型へ移せますか?
多くの場合CSVで移せます。制約になるのは、インストール型のソフトが書き出しに対応しているかどうかです。対応していない場合、画面から手で写すことになります。
現在インストール型を使っていて将来の移行を考えるなら、書き出し機能の有無を先に確認しておいてください。
参照元
記事情報
著者: 株式会社Mer
レビュー: Pipedrive運営チーム(株式会社Mer)
更新日: 2026年8月13日
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