クラウド型の顧客管理は、提供事業者のサーバー上で動く顧客管理システムを、ブラウザから使う形態です。導入が速く、複数人での同時利用と自動更新が標準で備わっています。
一方で、自社の外にデータを置くことになります。選ぶときに確認するのは機能ではなく、預けたデータをどう扱われるかです。 ここを飛ばすと、契約後や解約時に想定と違う制約に当たります。
以下では、確認すべき4点を先に扱い、そのあとで用語の整理と製品の絞り込み方を扱います。インストール型との比較は別の記事に分けています。
クラウド型の顧客管理とは
自社にサーバーやソフトを用意せず、提供事業者が運用する環境をブラウザから使う形です。利用料を払っている間だけ使え、更新は事業者側で行われます。
インストール型との比較(費用の出方、複数人での利用、データの置き場所など6観点)は顧客管理ソフトとはで扱っています。本記事は、クラウド型に決めた読者に向けた内容です。
クラウド型を選ぶと、次の3つが自社の外に移ります。
サーバーの運用。 障害対応、性能の確保、バックアップ
更新の管理。 バージョンアップの実施とその検証
データの物理的な置き場所。 どこの拠点に保管されるか
この3つが移ることで、社内にインフラの担当がいなくても顧客管理を始められます。中小規模の組織でクラウド型が選ばれる理由の大半はここにあります。
移るのは作業だけで、責任は移りません。 顧客のデータを預けているのは自社であり、社内規程や取引先との契約に対する説明責任は自社に残ります。だから次の4点を確認します。
利点のほうは、多くの記事で説明されているとおりです。導入が速く、端末を選ばず、更新の手間がなく、複数人での同時利用が標準で備わっています。BtoBの営業で複数人が同じ顧客に関わるなら、これらは実務上の必要条件になります。
利点は比較しなくても分かる部分で、差が出るのは以下の4点です。 製品ページには大きく書かれないため、自分で確認する必要があります。
確認する4点
1. データの保管場所
どこの国・地域のサーバーにデータが置かれるかを確認します。社内規程や、取引先との契約で国内保管が求められている場合は、選定の必須条件になります。
同時に見るのは、バックアップの取得頻度と保管期間です。事業者側でバックアップを取っていても、自社の操作ミスで消したデータを戻せるかは別の話です。誤って削除した場合の復旧手段があるかを確認してください。
自社側でも定期的に書き出しておくと、事業者の対応を待たずに済みます。月に一度CSVで出す運用を決めておくだけで、いざというときの選択肢が増えます。
書き出したファイルの置き場所も決めてください。個人の端末に置くと、その人が抜けたときに所在が分からなくなります。共有ストレージに、日付をつけて残す形が扱いやすいです。
保管場所について社内で説明を求められる場面は、実際には取引先の情報セキュリティ確認で起きます。契約時に確認しておけば、聞かれた時点で答えられます。 導入してから調べ直すより手間が小さくなります。
2. 可用性と障害時の扱い
止まったときに何が起きるかを、契約前に確認します。見るのは3点です。
稼働率の目安が公開されているか
障害の発生状況を確認できるページがあるか
障害時の連絡方法と、想定される復旧の流れ
クラウド型では、自社で復旧できません。 事業者の復旧を待つことになります。これは欠点ではなく、そういう前提で運用を組むということです。
止まった間の業務をどうするかは、自社で決めておきます。当日の連絡先だけを別に控えておく、といった簡単な備えで足りることが多くあります。
備えの範囲は、止まったときに困る業務から決めます。商談の記録が半日遅れても実害は小さい一方、当日の訪問先と連絡先が分からないのは困ります。その日に必要な情報だけを別の形でも持っておけば足ります。
営業の現場では、当日分の予定と連絡先をカレンダーやスマートフォンに持っている場合が多く、実質の備えが既にあることもあります。何が別の場所にあるかを一度確認してください。
3. アクセス制御
誰がどこまで見られるかを分けられるかを確認します。BtoBの営業では、次の場面で必要になります。
外部の協力会社や業務委託と一部だけ共有する
部門ごとに担当する顧客を分ける
退職者のアクセスを即座に止める
3つ目が抜けやすい部分です。 アカウントの停止が管理画面からすぐできるか、停止した人の記録が残るかを確認してください。停止に事業者への連絡が必要な製品だと、退職当日の対応が間に合いません。
二要素認証やIPアドレスによる制限が使えるかも、社内規程によっては条件になります。上位プランのみで提供される場合があるため、必要ならプラン選定と合わせて確認します。
権限の設計は、最初に決めておくほうが摩擦が小さくなります。全員が全部見られる状態で始めて後から狭めると、「信用されていない」と受け取られることがあります。導入時に方針として伝えれば、同じ設定でも受け止められ方が変わります。
分ける単位も決めます。担当者ごとか、部門ごとか、案件の種類ごとか。細かく分けるほど運用の手間が増えるため、実際に見せたくない情報があるところだけを分けてください。
4. 解約したときのデータ
契約を終える判断をしたときに、自社のデータをどう取り出せるかを確認します。導入前に見るべき項目です。
CSVやAPIで書き出せるか
書き出せる範囲(顧客、案件、活動履歴、添付ファイル)
解約後にデータが保持される期間
取り出せないことが多いのは、活動履歴と添付ファイルです。 顧客と案件は出せても、この2つが出せない製品があります。乗り換えのときに失うのはたいていここです。
確認は文章ではなく実物で行ってください。トライアル中に一度書き出して、開いて中身を見るのが確実です。「エクスポート対応」と書かれていても、出てくるファイルに何が入っているかは開くまで分かりません。
解約後の保持期間も見ます。解約と同時に消える製品と、一定期間は保持される製品があります。移行の作業期間を確保できるかに直結します。 期間が短いなら、解約の前に書き出しを済ませる段取りが要ります。
この4点は、どれも導入前に数分で確認できます。逆に、導入してから調べると、契約や運用が動き出した後の変更になり、負担が大きくなります。
CSとCRMの違いは何ですか?
CRMは顧客関係管理(Customer Relationship Management)とその製品カテゴリを指します。一方、CSは文脈によって3つの意味で使われるため、まず何を指しているかを確認する必要があります。
略 | 指すもの | 顧客管理との関係 |
|---|---|---|
CS(カスタマーサクセス) | 顧客が成果を出せるよう能動的に支援する活動・部門 | CRMのデータを使って支援対象と時期を判断する |
CS(カスタマーサポート) | 問い合わせに対応する活動・部門 | 問い合わせ履歴をCRMまたは専用ツールに残す |
CS(顧客満足度) | 満足度そのもの、またはその指標 | CRMの項目として持つことがある |
混同が起きやすいのは、最初の2つです。 カスタマーサクセスはこちらから働きかける活動、カスタマーサポートは相手からの連絡に応じる活動で、必要なデータも指標も違います。
社内で用語がずれていると、同じ「CS」の話をしているつもりで別のことを議論します。どちらを指すかを文書で決めておいてください。
顧客管理システムとの関係で言えば、どのCSであっても土台は同じです。同じ顧客を1件として持ち、活動の記録が1か所に集まっている状態が前提になります。
カスタマーサクセスを機能させるには、契約後の利用状況と、契約前の商談で何を期待されていたかがつながっている必要があります。売った側と支援する側が別のシステムを見ていると、この接続が切れます。
クラウド型を選ぶときに部門をまたぐ利用を想定しているなら、権限を分けたうえで同じデータを共有できるかが条件になります。上の3番目(アクセス制御)と同じ確認です。
顧客管理のクラウドの人気ランキングは?
ランキングは掲載する媒体ごとに基準が違い、自社の条件とは無関係に決まります。ここでは序列を作らず、候補を絞る条件を示します。
次の順で条件を当てはめてください。上から順に、候補が減っていきます。
上の4点の必須条件。 保管場所、アクセス制御、書き出しのうち、自社に譲れないものがあるか
使う人数と、閲覧だけの人数。 課金の形が製品によって違う
管理する対象。 顧客の名簿だけか、案件の進捗まで含むか
連携が必要なツール。 メール、カレンダー、会計、フォーム
自分で変更できるか。 項目やステージの追加をベンダー依頼なしにできるか
1で絞れることが多くあります。 保管場所や退職時のアカウント停止に条件があるなら、その時点で候補は数個になります。
条件は書き出しておいてください。頭の中に置いたまま製品ページを見ると、機能の多さや画面の印象に判断が引きずられます。5つの条件を紙に書き、製品ごとに○×を付けるだけで、比較が短時間で終わります。
ランキング記事そのものは候補を集める用途で使えます。順位を判断材料にせず、名前を拾う用途に限定してください。 掲載の基準は媒体ごとに違い、自社の5条件とは無関係に決まっています。
候補が3つ以下に絞れたら、そこからはトライアルで判断します。仕様書の比較でこれ以上詰めても、実際の使いやすさは分かりません。
選定軸の詳しい内容は顧客管理システムとはで扱っています。無料の選択肢とその限界は顧客管理ソフトとはを参照してください。
導入の進め方
クラウド型は設定そのものが短時間で終わります。時間がかかるのは運用の設計と定着です。
手順は次のとおりです。
移す項目を絞る。 顧客ID、会社名、担当者、ステータス、次回アクション日の5つで始める
現在動いている顧客と案件だけを移す。 過去の全件は後回しにする
1〜2週間、並行運用する。 元の場所と両方に入力して、回ることを確認する
切り替える。 更新先を1つに決めた時点で移行は完了
使われているかを測る。 更新率、次回アクション日の空欄数、ログイン人数
3を飛ばさないことです。 ツールを替えただけでは運用は変わりません。誰がいつ更新するかを決め直す時間が要ります。
並行運用の期間に見るのは、入力が続いているかだけです。機能の使い勝手より、日々の更新が回るかどうかが定着を決めます。2週間続けば、その後も続く見込みが立ちます。
5の測定は、切り替えた月から始めます。最初の1か月は誰でも入力するため、判断できるのは2か月目以降です。入れた直後の数字を成功の根拠にしないでください。
項目の設計と分類のしかたは顧客リストとはにまとめています。移す前に、何を持つかを決めておくと手戻りが減ります。
表計算ソフトから移す場合は、乗り換えの判断条件を先に確認してください。条件を満たしていないまま移すと、機能を持て余したまま入力の手間だけが増えます。判定は顧客管理をExcelでやる方法と、乗り換えを判断する条件の6条件で行えます。
管理者も決めておきます。項目の追加、権限の変更、不要データの整理を誰が担うか。兼任でかまわないので、名前を決めてください。 決めないと、半年後に誰も直せない状態になります。
手元で確かめる
比較表だけでは決められません。トライアルで確認するのは5点です。
実際に入力する人が、1件を登録するのにかかる時間
項目を1つ追加できるか(管理画面から自分で)
表記の違う同じ会社を重複として検出できるか
CSVで書き出して、活動履歴と添付が含まれるか
期日を過ぎた案件が実際に通知されるか
Pipedriveには無料トライアルがあります。今の顧客リストから数十件だけ取り込み、この5点を確かめるところから始められます。
Merは国内唯一のマスターパートナーとして日本市場でPipedriveを提供しています。全プランに日本語サポートと日本語オンボーディングが付きます(https://www.pipedrive.merinc.co.jp/plans、2026-08-12取得)。
よくある質問
クラウド型は情報漏えいの心配がありませんか?
リスクの置き場所が変わります。事業者側のインフラは専門の体制で運用される一方、自社側ではアカウント管理と権限設定が要点になります。
実務で多いのは、退職者のアカウントが残る、共有リンクの範囲が広い、といった自社側の運用です。確認する4点のうち3番目(アクセス制御)を先に決めてください。
インストール型なら安全というわけでもありません。端末にデータがある形は、端末の紛失や故障がそのまま漏えいと消失につながります。どちらの形態でも、守り方が変わるだけでリスクは残ります。
顧客管理に使えるフリーソフトのおすすめは?
無料には3つの形態があり、限界の出方が違います。無料のソフト本体、SaaSのフリープラン、表計算ソフトなどの汎用ツールです。詳しくは顧客管理ソフトとはで扱っています。
クラウド型を前提にするなら、フリープランから始めて同じ製品の有料へ移る形が、データ移行の手間が最も小さくなります。
顧客データ管理におすすめのアプリは?
「アプリ」はスマートフォンで使うものを指すことが多い言葉です。多くのクラウド型製品がスマートフォン向けのアプリを提供しています。
外出先での入力を重視するなら、トライアルでスマートフォンから1件登録してみてください。そのときの所要時間が、実際に使われるかどうかを決めます。
オフラインでは使えませんか?
製品によります。閲覧だけできるもの、一部の入力を保存して後で同期するもの、まったく使えないものがあります。
接続が不安定な環境で使う予定があるなら、トライアル中に機内モードで開いて挙動を確認してください。移動中に記録する運用を想定しているなら、この確認は必須になります。
途中でプランを上げ下げできますか?
多くの製品でできますが、年間契約の途中では下げられない場合があります。契約の単位と、変更のタイミングを契約前に確認してください。
人数の増減が読めない段階では、月額から始めて安定してから年間契約に移す形が扱いやすいです。割引率と、変更の自由度のどちらを取るかの判断になります。
社内にIT担当がいなくても運用できますか?
クラウド型であれば、設定は管理画面から進められます。詰まりやすいのは設定ではなく、項目と運用ルールを決める部分です。
日本語のサポートやオンボーディングが付いているかを、選定時に確認してください。ここが総額に効きます。
社内で1人、管理者を決めておけば足ります。専任である必要はなく、営業の担当者が兼任している例が多くあります。必要なのは技術力ではなく、決めたルールを維持する役割です。
既存のツールと併用できますか?
できます。メール、カレンダー、会計、フォームとの連携が用意されている製品が一般的です。
確認するのは連携の有無だけでなく、どちらが正のデータになるかです。両方で編集できる設計だと、どちらが最新か分からなくなります。片方向にするか、更新の担当を決めてください。
参照元
記事情報
著者: 株式会社Mer
レビュー: Pipedrive運営チーム(株式会社Mer)
更新日: 2026年8月13日
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