顧客リストは、取引のある顧客と、これから取引する可能性のある相手を、条件と状況つきで一覧にしたものです。名前と連絡先を並べただけの表は、名簿ではあってもリストとしては機能しません。
違いは、判断に使えるかどうかにあります。誰に、いつ、何をするかを決められる状態になっていれば、リストとして働きます。
以下では、持つべき項目、分類のしかた、リストが使われなくなる理由を順に扱います。ツールの選び方は別の記事に分けています。
顧客リストとは何ですか?
顧客リストは、顧客の情報に加えて、接触の状況と次の判断を持たせた一覧です。単なる連絡先の集まりとは、次の3点で違います。
選んだ理由が分かる。 どの条件に当てはまるから載っているのか
今の状況が分かる。 最後にいつ、誰が、何をしたか
次が決まっている。 進めるのか、待つのか、外すのか
この3つが揃うと、リストを開いた人が今日やることを決められます。1つでも欠けると、眺めるだけの一覧になります。
「選んだ理由」が抜けたリストは、成果が出なかったときに条件を疑えません。件数だけが残り、次に何を変えればよいかが分からなくなります。条件を1行で書き残しておくと、次の判断が速くなります。
「今の状況」には、相手の反応まで含めます。送った・話したという事実だけでは足りません。反応が無かったことも情報で、記録がなければ同じ相手に同じ内容を再送する事故が起きます。
とくに「次が決まっている」が抜けやすい部分です。過去の記録だけを残す設計にすると、更新は止まります。誰かが行動を起こすきっかけが無いためです。
「次」は3択で持ちます。進める、時期を置く、対象から外す。3つ目を用意していないリストは、反応のない相手を抱えたまま件数だけが増えていきます。
外した相手も、理由をつけて残しておいてください。予算が理由なら期が変わったとき、担当者が理由なら異動があったときに、戻せる状態になります。削除すると、同じ相手に別の担当者が新規として連絡する事故が起きます。
顧客名簿とは何ですか?
顧客名簿は、顧客の基本情報をまとめた台帳です。会社名、住所、連絡先、担当者といった、変わりにくい情報が中心になります。
使い分けは次のとおりです。
顧客名簿 | 顧客リスト | |
|---|---|---|
主な内容 | 基本情報 | 基本情報+接触状況+次の判断 |
更新の頻度 | 変更があったとき | 接触のたび |
使う場面 | 請求、送付、照会 | 営業活動の判断 |
並べ替えの軸 | 会社名、地域 | 次回アクション日、ステータス |
この2つを1つの表で兼ねようとすると崩れます。 名簿は変わらないことが価値で、リストは変わり続けることが価値だからです。求めるものが逆になります。
実務では、名簿を土台として持ち、その上に活動の記録を重ねる形にします。会社を1件として持ち、接触の記録は別に持って、顧客IDでつなぎます。
分けておく利点は、更新の責任も分けられることです。名簿の内容が変わるのは移転や社名変更のときで、頻度は低く、担当も限られます。活動の記録は毎日増え、更新するのは担当者本人です。
分けずに1枚で持つと、この2つの更新が同じ表で起きます。名簿を直したい人と活動を記録したい人が同時に触ることになり、どちらの操作も遅くなります。
顧客リストに持つ項目
最初から多くの項目を作ると、空欄が並びます。まず7つで始めてください。
項目 | 用途 |
|---|---|
顧客ID | 社名が変わっても追える一意の値 |
会社名 | 表記を1つに固定する |
担当者 | 相手側の窓口。複数いる場合は別に持つ |
連絡先 | メール、電話 |
ステータス | 今どの段階にいるか |
次回アクション日 | 空欄を許さない |
自社担当 | 誰が持っている案件か |
顧客IDを最初に置くのが要点です。会社名を鍵にすると、社名変更や表記のゆれのたびに別の顧客として扱われます。連番でかまいません。あとから別のツールへ移すときも、この列があれば対応関係を保てます。
ステータスは選択肢を固定してください。 手入力にすると、同じ状態を指す言葉が複数の表記で入ります。「検討中」「検討」「打診中」が別の値として集計され、件数が合わなくなります。
次回アクション日を空欄のまま許すと、リストは数か月で機能を失います。日付が入っていない行は誰の目にも留まらず、そのまま放置されるためです。次に何もしないと決めたなら、対象から外すステータスに変えて、リストの中で「保留」という状態を残さないことです。
後から足す項目
運用が回り始めてから、必要になったものだけを足します。候補は次のとおりです。
業種・規模・地域。 条件で絞り込むときに使う
流入経路。 問い合わせ、紹介、展示会など。どこからの顧客が続くかを見る
最終接触日。 放置されている顧客を見つける
失注理由。 再接触の起点になる
足す基準は「その項目で絞り込むか、集計するか」です。 どちらもしないなら、備考に書いておけば足ります。逆に、備考に書かれた内容を集計したくなったら、そこで項目に昇格させます。
備考は放置すると判断材料の置き場になります。同じ内容が何件も書かれ始めたら、それは項目になるべき情報です。月に一度、備考を見て昇格させるものがないかを確認すると、表の外に情報が溜まりません。
流入経路は、早めに足しておくと後で効きます。どこから来た顧客が続いているかが分かると、営業活動とマーケティングのどちらに投資するかを数字で判断できます。後から遡って埋めることはできないため、この項目だけは最初から持っておくほうが安全です。
顧客の分類のしかた
「顧客の4パターン」という言い方を見かけますが、固定の4分類が確立しているわけではありません。 分類の軸は複数あり、何のために分けるかで変わります。
代表的な軸は3つです。
1. 取引の状況で分ける
新規、既存、休眠、失注のように、取引の有無と時期で分けます。最も基本的な軸で、打ち手が明確に変わります。
新規には接点をつくる活動、既存には継続と追加、休眠には再接触のきっかけ、失注には条件が変わったかの確認。同じリストの中で、やることが4通りに分かれます。
この軸で分けるときに決めておくのは、休眠の定義です。最後の接触から何か月で休眠に移すかを数字で決めておかないと、担当者ごとに判断が分かれます。半年でも1年でもかまいませんが、決めた数字を書き残してください。
自動で移す仕組みがあると、判断の手間が消えます。最終接触日から一定期間が過ぎた行を休眠に変え、再接触の対象として別の一覧に出す形です。
2. 購買の頻度と金額で分ける
取引の回数と金額の大きさで分けます。上位の顧客に時間を厚く配分する判断に使います。
注意点は、金額だけで見ないことです。金額が小さくても継続している顧客と、一度だけ大きい顧客では、扱いが違います。頻度と金額は別の列で持ってください。
期間も揃えます。「累計の金額」と「直近1年の金額」では、上位に来る顧客が変わります。どちらを見るかで判断が変わるため、期間を明記した列名にしておくと誤解が減ります。
BtoBでは、金額が大きい顧客ほど関係者が多く、対応の手間もかかります。時間の配分を決めるために分けるなら、金額だけでなく、かかっている工数も見てください。
3. 関係の段階で分ける
認知、検討、商談、契約、活用のように、相手との関係がどこまで進んでいるかで分けます。マーケティングと営業をまたぐときに使う軸です。
この軸を使うときは、段階の定義を先に文章で書いてください。 「検討中」が人によって違う意味になると、集計しても比較できません。
定義は行動で書きます。「関心が高い」は解釈が分かれますが、「見積もりを提示した」「決裁者と話した」は判定が一致します。誰が見ても同じ答えになる条件を選んでください。
段階を戻すときのルールも決めます。商談が止まったときに前の段階へ戻すのか、そのまま置いて期日だけ延ばすのか。決めていないと、進捗の集計が実態より良く見えます。
3つの軸は同時に使える
排他ではありません。取引の状況で大きく分け、その中を購買の頻度と金額で並べる、という重ね方ができます。分類を1つに絞る必要はありません。
ただし、列は分けて持ってください。1つの列に「既存・上位」のように2つの情報を入れると、どちらの軸でも絞り込めなくなります。
分類を決めるときの順番
軸を先に選ばず、何を判断したいかから決めます。 誰に時間を使うかを決めたいなら頻度と金額、どんな連絡をするかを決めたいなら取引の状況です。
分類は少ないほうが機能します。4つを超えると、境界の判断で迷う件数が増え、結局は使われなくなります。迷う件数が増えると、分類そのものが人によってばらつき、集計が信用できなくなります。
もう1つ決めておくのは、分類した結果をどこで見るかです。分類を作っても、それで絞り込んだ一覧を誰も開かないなら、入力の手間だけが増えます。 分ける前に、分けた結果を使う場面を1つ挙げてください。挙げられないなら、その分類は要りません。
エクセルで担当者リストを作るには?
表計算ソフトで作る場合の要点は3つです。1行1件にすること、セルを結合しないこと、1セルに2つの情報を入れないことです。
担当者が複数いる会社は、顧客のシートと担当者のシートを分け、顧客IDでつなぎます。1行に「担当者1」「担当者2」と横に増やすと、3人目が現れたときに列を足すことになります。
担当者シートに持つのは、氏名、部署、役職、連絡先、そして顧客IDです。役職を別の列にしておくと、決裁者と実務担当を分けて見られます。 「山田様(部長)」のように1セルにまとめると、この絞り込みができません。
異動が起きたときの扱いも決めておきます。上書きすると過去のやり取りの相手が分からなくなるため、行を残して状態を変える形が扱いやすいです。誰と話していたかが残ると、後任への引き継ぎで使えます。
列の設計、入力規則、重複の防ぎ方といった手順は顧客管理をExcelでやる方法と、乗り換えを判断する条件にまとめています。表計算ソフトで運用を続ける判断をした場合は、そちらを参照してください。
リストが使われなくなる理由
作った直後は使われても、数か月で開かれなくなることがあります。原因は3つに絞られます。
更新されない。 誰がいつ更新するかが決まっていないと、最初の1か月で止まります。更新を促す仕組みが要ります。次回アクション日を必須にして、期日が来たら知らせる形が最も簡単です。
止まり方には順序があります。まず活動の記録が抜け、次に次回アクション日が空欄になり、最後にステータスが実態と合わなくなります。最初の兆候は活動の記録です。 ここが薄くなった時点で手を打ちます。
分類が使われない。 分類を作ったものの、その分類でリストを開くことがない状態です。分類は、それを使った画面や一覧があって初めて機能します。分ける前に、分けた結果をどこで見るかを決めてください。
重複が混ざる。 同じ会社が別の行として入り、片方だけが更新されます。どちらが正しいかを人が判断する状態になると、リスト全体が信用されなくなります。
重複は入口から入ります。問い合わせフォーム、展示会の名刺、紹介、条件抽出。経路ごとに表記が違うため、同じ会社が別の書き方で登録されます。入口で表記を揃えるルールを決めるほうが、後から名寄せするより安く済みます。
信用されなくなったリストは、担当者が個人のメモで動き始めます。この段階に入ると、リストを直しても戻りません。 個人のメモに移った情報を戻す作業が別途必要になります。
使われているかを測る
止まる前に気づくために、月に一度だけ数えてください。指標は3つで足ります。
今月更新された行の割合
次回アクション日が空欄の行の数
同じ会社名が2行以上ある件数
3つとも、表計算ソフトでもフィルターと関数で出せます。数字が悪化し始めた時点で手を打つほうが、止まってから立て直すより安く済みます。
悪化の原因は、たいてい項目の多さか、更新の目的が伝わっていないかのどちらかです。入力したデータが自分の仕事に返ってくる形になっていれば、更新は続きます。
リストを判断に使える状態にする
顧客リストが機能するかどうかは、項目の数ではなく、次の3つが揃っているかで決まります。選んだ理由、今の状況、次の判断です。
表計算ソフトでも、この3つは持てます。持てなくなるのは、複数人で同時に更新する、期日を人が覚えきれない、権限を分ける必要がある、といった条件が出てきたときです。
順番も決まっています。まず項目と分類を決め、次に運用のルールを決め、最後にツールを選びます。ツールから入ると、その製品の初期設定が自社の分類になります。 自分たちが何で判断したいかを先に決めてから、それが実現できる製品を探してください。
判定の条件は顧客管理をExcelでやる方法と、乗り換えを判断する条件の6条件を使ってください。ツールを選ぶ段階に入ったら、顧客管理システムとはで選定軸を確認できます。
Pipedriveには無料トライアルがあります。今のリストから数十件だけ取り込み、次回アクション日での並べ替えと通知が実際に機能するかを見るところから始められます。
よくある質問
顧客リストと営業リストは違いますか?
指す範囲が少し違います。営業リストは接触する対象を中心に持ち、顧客リストは取引のある顧客も含みます。実務では同じ表で扱うことが多く、ステータスで区別します。
分ける必要が出るのは、扱う人が違うときです。新規開拓の担当と既存顧客の担当が分かれているなら、見る一覧を分けたほうが混乱しません。データは1つに持ち、絞り込みで分けます。
顧客リストは何件まで表計算ソフトで管理できますか?
件数では決まりません。触る人数と、期日の管理が必要かどうかで変わります。1人で使い、期日を自分で管理できているうちは、数千件でも問題は起きません。
分類は最初にいくつ作るべきですか?
3つか4つで始めてください。それ以上作ると、どちらに入れるか迷う件数が増えます。運用しながら、実際に使っている分類だけを残します。
使われていない分類は消してください。残しておくと、入力する人が判断に迷う要因になります。
失注した顧客はリストから削除しますか?
削除せず、ステータスを変えて残します。失注の理由と時期が残っていれば、条件が変わったときに戻せます。削除すると、同じ相手に別の担当者が新規として連絡する事故が起きます。
顧客リストの重複はどう見つけますか?
会社名の完全一致だけでは見つかりません。法人格の表記、全角と半角、旧社名が混ざるためです。表記のルールを先に決め、入り口で揃えるほうが、後から直すより安く済みます。
顧客リストの項目は途中で増やしてもよいですか?
増やせます。ただし、既存の行が空欄のまま残ります。増やすときは、過去分をどう埋めるかを同時に決めてください。埋めないと決めるのも判断の1つです。
増やす基準は「その項目で絞り込むか、集計するか」です。どちらもしないなら備考で足ります。
名簿とリストを1つの表で持ってはいけませんか?
件数が少なく、触るのが1人なら問題ありません。人数が増える、または請求などの業務が名簿を参照し始めた時点で、分けたほうが安全になります。更新の頻度と目的が違うためです。
参照元
記事情報
著者: 株式会社Mer
レビュー: Pipedrive運営チーム(株式会社Mer)
更新日: 2026年8月13日
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